自己破産とは、裁判所に破産申立書を提出し、破産宣告を受けたうえで、免責許可をもらうことで返済を免除を受けるための一連の手続きをいいます。
つまり、裁判所が申立人の収入や返済額を考慮し「返済不能である」と判断した場合、返済が免除されるという手続きです。
例えば、借金が100万円あっても年収が1000万円ある人の場合、返済することは可能なので支払い不能状態とはなりません。
しかし、借金が100万円で年収が10万円の人ならば、返済することは不可能なので支払い不能状態ということになります。
借金を免除してもらうためには、支払い不能状態であることに加えて「破産宣告」と「免責許可」が必要になります。
これら2つがそろって初めて「自己破産」として借金を帳消しにできるというシステムになっています。
破産宣告は、本来は破産手続きを始める裁判のことをいい、主に「破産手続きを開始するという裁判所の決定」のことを指します。
自己破産の申立てがされると、裁判官が申立人から話を聞き、現時点の収入や財産等をもってその負債を支払うことができないと認められた場合に破産手続開始を決定します。
この決定により申立人は「破産者」として認められます。
破産宣告が認められるには、裁判所から「支払い能力が皆無である」とみなされた場合に認められます。
具体的には以下の項目に当てはまっていないと破産宣告が認められ難いでしょう。
破産宣告だけでは申立人の返済義務は無くなりません。
残った債務について法律上の支払い義務を免除する制度のことを「免責」といいます。
免責許可とは、この借金を消すための手続きで、許可が下りれば借金がなくなります。
破産の原因が免責不許可事由に該当し、免責を許可することが正義に反すると裁判所が判断した場合は免責が認められません。
許可が下りるまでの期間としては、数ヶ月かかります。また、免責許可自体が確定しても、税金など一部の債権は免除されません。
免責の効果は、破産者の支払義務を免除するだけで、保証人に対しては及びません。
借金が免除される|返済義務が無くなる
破産者宣告の後免責許可が下りると、すべての債務の支払い義務が免除されます。つまり、借金が0円になります。
ただし、滞納していた税金などの支払いは免除されません。
税金や保険料、罰金、婚姻費用、養育費など、免責が確定しても免責されない「非免責債権」には注意が必要です。
何といっても、自己破産の大きなメリットは免責が認められると、全ての借金の返済義務が無くなることです。
まさに借金をリセットするような制度で、借金でどうしようもできない状態の方の救済措置となっています。
誰でも手続きが可能
上記の破産宣言の条件に該当しており、客観的に支払いが困難であれば、誰でも破産手続きが可能です。
借金が大きく膨らみすぎてどうしよう状態に陥っていても、自殺や夜逃げなどを考えないでください。
自己破産によって救われる可能性が残されています。
貸金業者からの取り立てが止まる
破産申し立て後は貸金業者からの取り立てがストップします。
自己破産を考えるほど借金が膨らんでいるということは、毎日のように催促の電話や取り立てに悩まされているでしょう。
それがストップするだけでも大きなメリットです。
手元に残せる財産もある
裁判所で定める基準を超えない財産(99万円以下の現金や20万円以下の預貯金など)は手元に残すことができます。
また、洗濯機やテレビなど比較的安い家電などの財産も手元に残すことができ、自己破産によって身ぐるみ剝がされるようなことはありません。
家族に迷惑はかからない
家族が保証人になっていない限り、家族に迷惑がかかることはありません。
家族がローンを組むときに悪影響はありませんし、子どもの進学に影響もなく、奨学金制度を利用することもできます。
信用情報機関に事故情報が掲載される
債権者である金融機関が、信用情報機関に事故情報を登録します。
このため、破産後、新しい借入れやローンの申込み、クレジットカードの新規発行が、約5年~10年間できなくなります。
事故情報は、自己破産宣告後手続きが完了しても、そこから5年~7年は抹消されません。
自己破産をすると、しばらくは借金ができなくなることに注意してください。
財産が処分される
自己名義の財産を所有している場合、これを処分して債権者に配当する必要があります。
ただし、生活必需品や99万円以下の現金については、当面の生活費として処分の対象外とすることができます。
実務上は、住宅・保険・貴金属・自動車などが差し押さえられるケースが多いです。
自動車については、ローン残債がなく、初年度登録から7年を経過しており、処分価格が20万円以内なら処分対象外となる可能性はあります。
就くことができる職業が制限される
免責決定を受けるまでの3ヶ月~半年間程度は、士業や警備員など一部、就くことができない職業があります。
免責決定後はこの制限はなくなります。
借金が免除されない場合がある
破産法252条の事情などに該当する場合、借金が免除されないことがあります。
これは、上記で説明した「免責許可が降りないことがあるケース」に該当した場合です。
官報等に掲載される
住所氏名が、国の発行する「官報」という機関誌に掲載されます。
官報は 国立印刷局のインターネット版官報で一週間分の官報が公開されており、だれでも購入できますが、一般の人が見る可能性は低いものです。
また、管財人が選定されている場合には本籍地の「破産者名簿」にも記載されますが、自己破産宣告後手続きが完了したのちに削除されます。
しかし、官報に記載されることにより、違法な貸金業者から頻繁に広告が入ることがあります。
自己破産によって借り入れができなくなった人の弱みに付け込んで法外な金利で貸し付けをしようとするものです。
自己破産によって人生を立て直そうとする人の障害にしかなりませんから、相手にしてはいけません。
保証人への取り立て
自己破産後免責決定を受けても、保証人には何の影響も及ぼしません。
したがって、保証人は債権者から保証債務についての追求を受けることになります。
自己破産を行う場合には、事前に保証人ときちんと相談しましょう。